第四章④ 資産グループの仕訳

資産グループの仕訳

「資産」グループの基本的な仕訳をみていきましょう。

資産グループのおもな勘定科目は、つぎのとおりです。

  • 現金
  • 当座預金
  • 売掛金(うりかけきん)
  • 受取手形(うけとりてがた)
  • 貸付金(かしつけきん)
  • 建物
  • 土地
  • 車両運搬具(しゃりょううんぱんぐ)

資産グループの仕訳の基本ルール


資産の増加は、借方に記入します。資産の減少は、貸方に記入します。

借方貸方
増加減少

それでは、資産グループの基本的な仕訳を学んでいきましょう。

現金(げんきん)の仕訳 


簿記の「現金」は、わたしたちが使う現金よりも範囲が広くなります。
私たちにとって、現金といえば、1万円札や千円札などの紙幣や100円玉などの硬貨になります。
これらに加えて、簿記では、小切手を受け取ったときなども現金になります。

【取引例1】  備品を購入し、代金10万円を現金で支払った。

借方貸方
備品 100,000現金 100,000

備品という資産が100,000円が増加し、現金という資産が100,000円減少しました。
資産の増加と資産の減少という組み合わせの仕訳です。


[取引例2]  普通預金から現金20万円を引き出した。

借方貸方
現金 200,000普通預金 200,000

普通預金からの引き出しによって、現金が増えます。
一方、現金を引き出されたことにより普通預金という資産が減少します。
資産の増加と資産の減少という組み合わせの仕訳です。

当座預金(とうざよきん)の仕訳      


小切手は、銀行の当座預金を利用します。
実務では、小切手をよく利用しますので、しっかり、覚えましょう。

【取引例1】 当座預金に現金20万円を預け入れた。

借方 貸方
当座預金  200,000 現金 200,000

現金を「当座預金に預けた」ことは、当座預金という資産の増加です。
現金を預ければ、手元の現金が減少します。
資産の増加と資産の減少という組み合わせの仕訳です。

【取引例2】  商品を仕入れ、代金10万円は小切手で支払った。

借方貸方
仕入  100,000当座預金 100,000


「小切手で支払った」は、当座預金という資産の減少です。
小切手の支払いは、必ず、当座預金を利用します。 
仕入は、費用の発生です。「借方」に記入します。
資産の減少と費用の発生という組みあわせの仕訳です。

売掛金(うりかけきん)の仕訳


売掛金とは、売上代金の未回収に使用します。

実務では、売上代金をすぐにその場で受け取るケースはほとんどありません。
大抵は、一ヶ月後の受け取りなど、あとから代金を受け取ることが多いのです。
これは、ビジネスが取引先との信頼で成り立っているからです。
このため、売上代金の未回収分をあらわす勘定科目が必要になります。
これが「売掛金」です。取引では「掛けで売り上げた」などの表現であらわされます。


【取引例1】 商品30万円を売り上げ、代金は掛けとした。

借方貸方
売掛金 300,000売上 300,000

掛けでの売り上げは、売掛金という資産の増加となります。
売上は収益の発生です。「貸方」に記入します。
資産の増加と収益の発生という組みあわせの仕訳です。

【取引例2】 売掛金30万円を現金で受け取った。

借方貸方
現金 300,000売掛金 300,000

売掛金の回収は、売掛金の減少となります。
資産の増加と資産の減少という組み合わせの仕訳です。

受取手形(うけとりてがた)の仕訳 


受取手形とは、その名のとおり「手形を受け取った」ときに使用します。
手形とは「誰が、誰に、いつ、いくら支払うのか」が、くわしく書かれた証券です。

手形には「約束手形」と「為替手形」があります。
どちらの手形でも受け取れば「受取手形」として処理します。
受取手形は、支払い期日に決済(現金化のこと)されて減少します。

【取引例1】 売掛金の代金として30万円の約束手形を受け取った。

借方貸方
受取手形 300,000売掛金 300,000

約束手形の受け取りは、受取手形という資産が増加し、売掛金という資産が減少します。
資産の増加と資産の減少という組み合わせの仕訳です。



【取引例2】 30万円の受取手形が決済され、当座預金に入金した。

借方貸方
当座預金 300,000受取手形  300,000

受取手形が決済されたときは、受取手形の減少し、当座預金が増加します。
資産の増加と資産の減少という組み合わせの仕訳です。

貸付金(かしつけきん)の仕訳


会社を経営するうえで、さまざまな事情から取引先にお金を貸すことがあります。
これを貸付金といいます。もちろん、貸したお金ですから、後日、返金されます。

【取引例1】 A社に現金80万円を貸し付けた。

借方貸方
貸付金  800,000現金  800,000

お金を貸したことにより貸付金という資産の増加になります。

受取手形が決済されたときは、受取手形の減少し、当座預金が増加します。
資産の増加と資産の減少という組み合わせの仕訳です。




【取引例2】 A社から貸付金80万円を現金で回収した。

借方貸方
現金  800,000貸付金  800,000

貸したお金が、返済されたときため貸付金の減少になります。

固定資産(こていしさん)の仕訳 


簿記では、土地や建物、さらに車などの車両運搬具を固定資産といいます。
長い間、会社で使用する資産が固定資産とイメージすればよいでしょう。
固定資産は、資産になります。


【取引例1】 社有車を購入し、代金100万円は現金で支払った。

借方貸方
車両運搬具 1,000,000 現金 1,000,000

社有車の購入は、資産の増加になります。勘定科目は車両運搬具です。
資産の増加と資産の減少という組み合わせの仕訳です。



【取引例2】 土地を購入し、代金3,000万円は現金で支払った。

借方貸方
土地 30,000,000 現金 30,000,000

土地の購入は、資産の増加になります。
資産の増加と資産の減少という組み合わせの仕訳です。

ここまで、おもな資産グループの仕訳をみてきましたが、いかがでしたでしょうか。
勘定科目が「どのグループなのか」を知っていれば、仕訳はとても簡単になります。
機械的にどんどん処理できるからです。
しかし、どのグループなのかを知らないと非常に悩むことになります。
「勘定科目」と「5つのグループ」の区分けの大切がわかると思います。

【速攻!チェック問題・資産編】

次の仕訳をしなさい。

【問題】

【1】山形株式会社は、得意先である滋賀株式会社に商品200,000円を売り上げ、代金は約束手形を受け取った。

【2】山形株式会社は、滋賀株式会社から受け取った約束手形200,000円が決済され、当座預金に入金された通知を受けた。

【3】宮城株式会社は、岐阜株式会社に対して、現金100,000円を貸し付けた。

【4】宮城株式会社は、岐阜株式会社から貸付金100,000円の返済を受け、現金を受け取った。

【解答】

【1】(借方)受取手形 200,000 /   (貸方) 売上   200,000

【2】(借方)当座預金 200,000 / (貸方)受取手形 200,000

【3】(借方)貸付金  100,000 /   (貸方) 現金   100,000

【4】(借方)現金   100,000 / (貸方)貸付金 100,000

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