第六章① 仕訳帳と総勘定元帳とは何か

帳簿組織のしくみ 

勘定科目の動きを整理整頓した簿記のしくみのことを「帳簿組織」といいます。
たとえば、家でお金を管理する人は、家計簿を作っているはずです。
どのくらいお金が入ってきて、何にいくら使ったのかを知るためです。
家計簿がなければ、毎日動くお金の管理は難しいでしょう。
感覚でお金を使っていたのでは、たちまち家計は赤字になってしまいます。
しっかりした帳簿である「家計簿」の作成によって、家計の収支は安定します。
これは、会社も同じです。
売上代金がいつ、いくら入金するのか。
その入金方法は、現金なのか、受取手形なのか。
仕入先への支払いは、いつまでにしなければならないのか。
現金なのか、支払手形での支払いなのか。
会社のお金の処理は複雑で、量も多くなります。
このため、しっかりとした管理が必要です。
このような勘定科目をきれいに整理整頓した簿記のしくみを「帳簿組織」といいます。

簿記の基本となる帳簿組織には、2種類あります。
それが「仕訳帳」「総勘定元帳」です。
帳簿に記録する順番は、仕訳帳→総勘定元帳になります。
これらをまとめて、主要簿といいます。
それでは、仕訳帳からみていきましょう。

仕訳帳と総勘定元帳とは何か


仕訳帳とは、日々の仕訳をきれいに整理整頓する帳簿です。
日々の仕訳は、ルールに基づいて整理する必要があります。
仕訳を日付順にきれいに整理する帳簿を「仕訳帳」といいます。
仕訳帳に記載された勘定科目は、総勘定元帳に転記されます。

総勘定元帳とは、勘定科目ごとに整理整頓されたノートです。 

学生時代、国語や数学あるいは社会など教科ごとノートをイメージしてください。
1冊のノートに国語や数学をごちゃまぜにしたノートはつくらなかったと思います。
ノートは1教科1冊ずつ作るのがベストです。 あとから確認しやすいからです。


簿記も同じです。
さまざまな勘定科目がごちゃまぜでは、見づらいし、あとからチェックするのも大変です。
このため、勘定科目ごとにきれいに整理しておく必要があります。
この勘定科目ごとにきれいに整理された帳簿を「総勘定元帳」といいます。
総勘定元帳とは、仕訳帳から総勘定元帳へ転記した勘定科目ごとのノートです。
どのように仕訳帳から総勘定元帳へ転記されるのかイメージをつかんで下さい。

[参考イメージ]

勉強科目国語数学
ノート国語のノート数学のノート
勘定科目現金売掛金
総勘定元帳現金元帳売掛金元帳

転記とは何か       

仕訳帳から総勘定元帳への転記事例 まず、はじめに「転記」の意味を知っておく必要があります。
「転記」とは移転記入の略と考えてください。
つまり、仕訳帳から総勘定元帳へ「移転させ記入する」という意味です。

仕訳帳から総勘定元帳への転記事例

【例1】 仕訳帳から総勘定元帳へ転記

それでは、仕訳帳から総勘定元帳へ転記の例をみていきましょう。

まずは【例1】の基本パターンです。

4月1日の取引は「商品400,000円を掛けで仕入れた」というものです。

この取引を仕訳帳から総勘定元帳へ転記します。

仕訳帳

日付摘要借方貸方
4/1(仕入)400,000 
          (買掛金) 400,000
 商品の仕入れ  

仕入元帳

 日付摘要借方貸方借/貸 残高
4/1 買掛金400,000 400,000
      

 

買掛金元帳

 日付摘要借方貸方借/貸残高
4/1 仕 入 400,000400,000
      

転記の基本は、単純明快です。
「仕入は、仕入元帳へ」、「買掛金は、買掛金元帳へ」転記するだけです。
4月1日の取引を仕訳帳から総勘定元帳へ転記すれば【例1】の仕入元帳と買掛金元帳のようになります。

総勘定元帳の見方

転記された総勘定元帳の見方をみていきましょう。

「摘要欄」について 

「摘要欄」は、仕訳帳の相手勘定を記入します。

仕入元帳をみて下さい。 4月1日の仕入元帳の摘要欄には「買掛金」と転記されてあります。
これは、 4月1日におこなった仕訳で、仕入の相手勘定が「買掛金」であることを意味します。
この点は、慣れるまで混乱するかも知れません。はじめは注意しながら転記していきましょう。

つぎに買掛金元帳をみてください。買掛金元帳の摘要欄には、「仕入」と転記されています。
4月1日の取引における買掛金の相手勘定が「仕入」だからです。

「借/貸」欄について

残高が「借方」側か、「貸方」側の残高なのか、を判断するものです。
仕入元帳は、「借」と記入されています。 したがって、「借方」側の残高であることがわかります。
買掛金元帳をみてください。
ここでは、「貸」と記入されています。
したがって、「貸方」の残高であることがわかります。

【例2】をみていきましょう。要領は[例1]と全く同じです。

この【例2】のポイントは、売掛金元帳の「残高」の見方になります。

総勘定元帳の「残高」の見方について

売掛金元帳をみて下さい。4月15日の残高が200,000円となっています。
これは、4月4日にあった売掛金残高800,000円が、4月15日に600,000円分が回収されたため、4月15日の時点において残高が200,000円であることを意味します。

800,000-600,000=200,000 というわけです。

総勘定元帳で、仕訳帳では、バラバラだった勘定科目が、日付順、勘定科目ごとにきれいに整理されることになります。
また、勘定科目ごとの残高もつねに把握できることになります。

【例2】

仕訳帳

日付摘要借方貸方
4/4(売掛金)800,000 
          (売 上) 800,000
 B社へ売上  
4/15(現 金)600,000 
          (売掛金) 600,000
 B社より売掛金の入金  

総勘定元帳

現金元帳

日付摘要 借方貸方借/貸残高
4/15 売掛金600,000 600,000
      

売掛金元帳

 日付 摘要 借方貸方借/貸残高
4/4 売上800,000 800,000
4/15 現金 600,000 借200,000

(注)計算式 800,000-600,000=200,000

売上元帳

日付摘要借方貸方借/貸残高
4/4 売掛金 800,000800,000
      

【参考:実務としての総勘定元帳の活用】 

総勘定元帳の活用方法とは

現在の経理は、仕訳を会計ソフトに入力すれば、総勘定元帳がすぐに作成されます。
このため、仕訳帳から総勘定元帳への転記のやり方をくわしく覚える必要はありません。
しかし、その仕組みと意味はさらりと理解しておく必要はあります。

総勘定元帳は勘定科目ごと日付順にキレイに整理された明細書です。
このため、実務において、非常に有意義な会計資料になるからです。

具体例をみていきましょう。

以下の【資料1】は、ある会社の接待交際費の総勘定元帳の一部です。

簿記検定では、総勘定元帳の「摘要」欄を省略されていますが、実務では摘要は重要です。

なぜならこの摘要には、その取引内容を簡単に記入する部分だからです。

[資料1]

接待交際費

日付相手勘定摘    要借方貸方差引金額
4/3現 金A社 接待飲食代20,000 10,000
4/20現 金B社 接待飲食代40,000 60,000
5/7当座預金B社 接待飲食代20,000 80,000
5/18現 金A社 接待飲食代10,000 90,000
5/29当座預金B社 接待飲食代30,000 120,000
6/10現 金C社 接待飲食代10,000 130,000
6/24当座預金D社 接待飲食代10,000 140,000

これは、抜粋資料です。
しかしながら、この接待交際費の総勘定元帳をみれば、どこの取引先を積極的に接待しているかが、明快になります。
この例でいえば、頻繁に接待しているA 社とB社がかなり重要な取引先なのだろう、と推測できるわけです。
実務において、総勘定元帳が貴重な会計資料であることが、わかると思います。

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