訂正仕訳とは何か

訂正仕訳とは何か 

仕訳のあと、間違いに気づいたときは、どうすべきでしょうか。
仕訳は、帳簿に記入されているので、消しゴムで消せばよいという単純なものではありません。
間違いのたびに消しゴムで消すような処理では、不正の温床になります。
仕訳の訂正は「消して訂正」するのではなく「加えて訂正」するのです。

仕訳の間違いは、大きく3つあげられます。

①「借方」と「貸方」の記入間違い。
②勘定科目の間違い。
③金額の間違い。

これら3つについて、訂正仕訳を順番にみていきましょう。

「借方」と「貸方」を間違えたときの訂正仕訳

つぎの取引を「借方」と「貸方」を間違えて仕訳しました。
訂正仕訳を行いましょう。

[取引]商品を売り上げ、代金200,000円は現金で受け取った。

借方貸方
売上 200,000現金 200,000

まず、間違えた仕訳である「借方」と「貸方」を正反対にした仕訳を行います。
つまり、以下のような仕訳を行います。

1[間違った仕訳の訂正仕訳]

借方貸方
現金 200,000売上 200,000

この仕訳によって、間違えた仕訳を帳消しにしたことになります。
つまり、新たな仕訳を「加えて訂正した」わけです。
つぎに正しい仕訳を行います。

2[正しい仕訳]

借方貸方
現金 200,000売上 200,000

この仕訳によって、一連の訂正仕訳が完了します。

このように訂正仕訳は「加えて訂正する」ために

1[間違った仕訳の訂正仕訳]
2[正しい仕訳]

の2つの仕訳を行う必要があります。

勘定科目を間違ったときの訂正仕訳

つぎの取引について勘定科目を間違えて仕訳しました。
訂正仕訳を行いましょう。

[取引]売掛金の代金100,000円を約束手形で受け取った。

借方貸方
受取手形 100,000買掛金 100,000

この場合においても、間違えた仕訳である「借方」と「貸方」を正反対にした仕訳を行います。
つまり、以下のような仕訳を行います。

1[間違った仕訳の訂正仕訳]

借方貸方
買掛金 100,000受取手形 100,000

この仕訳によって、間違えた仕訳を帳消しにします。
新たな仕訳を「加えて訂正した」わけです。

つぎに正しい仕訳を行います。

2[正しい仕訳]

借方貸方
受取手形 100,000売掛金 100,000

この仕訳によって、一連の訂正仕訳が完了します。

金額の間違いの訂正仕訳

つぎの取引において、金額を間違えて仕訳しました。
訂正仕訳を行いましょう。

[取引]商品を売り上げ、代金1,000,000円は掛けとした。

借方貸方
売掛金 100,000 売上 100,000

1,000,000円と仕訳すべきところを一ケタ間違って100,000円と記入してしまったのです。
まず、間違えた仕訳である「借方」と「貸方」を正反対にした仕訳を行います。

つまり、以下のような仕訳を行います。

1[間違った仕訳の訂正仕訳]

借方貸方
売上 100,000売掛金 100,000

この仕訳によって、間違えた仕訳を帳消しにします。
新たな仕訳を「加えて訂正した」わけです。
つぎに正しい仕訳を行います。

2[正しい仕訳]

借方貸方
売掛金 1,000,000売上 1,000,000

この仕訳によって、一連の訂正仕訳が完了します。

【参考】 金額間違いの場合、間違った差額である900,000円を追加仕訳する訂正仕訳するのは、いけないのですか?という質問を受けることがあります。つまり、つぎのような仕訳ではダメなのか、という質問です。

借方貸方
売掛金 900,000売上 900,000

確かに、結果的には1,000,000円という数字は同じになります。

しかし、この仕訳は学習上もまた、実務上も間違った仕訳と言わざるをえません。

なぜなら取引の実態を表わさないからです。
900,000円を追加訂正する仕訳が認められるのならば、200,000円を5回取引仕訳し、合計1,000,000円でもよいのか、という主張も認めることになります。簿記はお金を取り扱う技術を学ぶ学問ですから、不正の温床になる処理は認められないのです。