初級簿記⑦ 資産、負債、純資産の仕訳

「資産」グループの仕訳

資産、負債、純資産の仕訳を解説していきます。この3つの勘定科目のグループで、貸借対照表は構成されています。グループごとくわしく解説していきます。

簿記の仕訳が、最終的に決算書である貸借対照表にたどり着くのですね。あらためて勉強になります。

資産の増加は「借方」、減少は「貸方」へ記入する

「資産」グループの基本的な仕訳をみていきましょう。
おもな資産グループの勘定科目を復習すれば、つぎのとおりです。

□現金  □当座預金  □売掛金  □受取手形  □貸付金

□建物    □土地          □車両運搬具 

資産グループの仕訳の基本ルールはつぎのとおりです。

借方に「増加」、貸方に「減少」となります。

 借方貸方
 増加 減少 

□現金の仕訳

簿記の「現金」は、わたしたちが使う現金よりも範囲が広くなります。
現金といえば、1万円札や千円札などの紙幣や100円玉などの硬貨を思い浮かべるはずです。
しかし、簿記では、小切手を受け取ったときなども現金になります。

[取引例1]

備品を購入し、代金10万円を現金で支払った。

 借方貸方
 備品 100,000現金 100,000

現金で支払いますから、現金が減少します。
これは、資産の減少です。貸方に「現金100,000円」となります。
一方、備品は「資産」です。
資産の増加は、借方です。借方に備品100,000円となります。

[取引例2]

普通預金から現金20万円を引き出した。

 借方貸方
 現金  200,000普通預金  200,000

普通預金からの引き出しによって、現金が増えます。
一方、現金を引き出されたことにより「普通預金」は減少します。
普通預金は、資産グループです。資産の減少は、貸方になります。
このため、普通預金は、貸方に記入されます。

□当座預金の仕訳

小切手は、銀行の当座預金を利用します。
実務では、小切手をよく利用しますので、しっかり、覚えましょう。

【取引例1】

当座預金に現金20万円を預け入れた。

 借方貸方
 当座預金 200,000現金 200,000

現金を「当座預金に預けた」ことは、資産グループである「当座預金」の増加です。
借方に「当座預金」となります。
現金を預ければ、手元の現金が減少します。このため、資産の減少です。

[取引例2]

商品を仕入れ、代金10万円は小切手で支払った。

 借方貸方
 仕入 100,000当座預金 200,000

「小切手で支払った」のは、「当座預金」の減少です。
小切手の支払いは、必ず、当座預金を利用しなければならないからです。
仕入は、費用の発生です。このため「借方」となります。

□売掛金の仕訳

売掛金とは、売上代金の未回収に使用します。

実務では、売上代金をすぐにその場で受け取るケースはほとんどありません。
大抵は、一ヶ月後の受け取りなど、あとから代金を受け取ることが多いのです。
これは、ビジネスが取引先との信頼で成り立っているからです。
このため、売上代金の未回収分をあらわす勘定科目が必要になります。
これが「売掛金」です。
取引では「掛けで売り上げた」などの表現であらわされます。

[取引例1]

商品30万円を売り上げ、代金は掛けとした。

 借方貸方
 売掛金 300,000売上 300,000

掛けでの売り上げは、「売掛金」の増加となります。

[取引例2]

売掛金30万円を現金で受け取った。

 借方貸方
 現 金 300,000売掛金 300,000

「売掛金」の回収は、売掛金の減少となります。

□受取手形の仕訳

受取手形とは、その名のとおり、「手形を受け取った」ときに使用します。
手形とは、「誰が、誰に、いつ、いくら支払うのか」が、くわしく書かれた証券です。

手形には「約束手形」と「為替手形」があります。
どちらの手形でも受け取れば、「受取手形」として処理します。
受取手形は、支払い期日に決済(現金化のこと)されて減少します。

[取引例1]

売掛金の代金として30万円の約束手形を受け取った。

 借方貸方
 受取手形 300,000売掛金 300,000

約束手形の受取は「受取手形」の増加となります。

[取引例2]

30万円の受取手形が決済され、当座預金に入金した。

 借方貸方
 当座預金 300,000受取手形 300,000

受取手形が決済され、入金されたときは、「受取手形」の減少となります。

   

□貸付金の仕訳

会社を経営するうえで、さまざまな事情から取引先にお金を貸すことがあります。
これを「貸付金」といいます。
もちろん、貸したお金ですから、あとから返してもらうことになります。

[取引例1]

A社に現金80万円を貸し付けた。

 借方貸方
 貸付金  800,000 現 金 800,000

お金を貸したのですから「貸付金」の増加になります。


[取引例2]

A社から貸付金80万円を現金で回収した。

 借方貸方
 現 金  800,000 貸付金 800,000

貸したお金が、返済されたときは、「貸付金」の減少になります。

 □固定資産の仕訳

簿記では、土地や建物、さらに車などの車両運搬具を「固定資産」といいます。
長い間、会社で使用する資産をイメージすればよいでしょう。

[取引例1]

社有車を購入し、代金100万円は現金で支払った。

 借方貸方
 車両運搬具 1,000,000現金 1,000,000

社有車は固定資産になります。勘定科目は、「車両運搬具」です。

[取引例2]

土地を購入し、代金3,000万円は現金で支払った。

 借方貸方
 土 地 30,000,000現金 30,000,000

土地は固定資産になります。

ここまで、さらりと資産グループの仕訳をみてきましたが、いかがでしたでしょうか。

勘定科目が、「どのグループなのか」を知っていれば、仕訳はとても簡単です。
つまり、機械的にどんどん処理できます。
しかし、どのグループなのかを知らないと非常に悩むことになります。
「勘定科目」と「5つのグループ」の区分けが、いかに大切がわかると思います。
それでは、他のグループもみていきましょう。

「負債」グループの仕訳

□負債の増加は「貸方」、減少は「借方」へ記入する

「負債」グループの基本的な仕訳をみていきましょう。
おもな負債グループの勘定科目を復習すれば、つぎのとおりです。

□借入金    □買掛金   □支払手形

□未払金    □預り金      など

負債グループの仕訳の基本ルールはつぎのとおりです。
借方に「減少」、貸方に「増加」となります。

 借方貸方
 減少 増加 

□借入金の仕訳

銀行や取引先からお金を借りることがあります。
これを「借入金」といいます。
借りたお金ですから、あとで、返済しなければなりません。

[取引例1]

銀行から現金100万円を借り入れた。

 借方貸方
 現 金1,000,000借入金1,000,000

負債グループである借入金の増加ですから「貸方」に借入金100万円と仕訳します。
そして、現金が増えますから「借方」に現金となります。

[取引例2]

銀行から借りていた借入金100万円を返済した。

 借方貸方
 借入金 1,000,000現 金 1,000,000

借入金の返済は、負債の「減少」です。
すなわち、借方に「借入金」となります。
一方、現金での支払いですから貸方に現金となります。

□買掛金の仕訳

商品を仕入れ、代金があと払いのとき「買掛金」を使用します。
このような商品の仕入れを「掛け仕入れ」といいます。
会社がおこなう取引は、基本的に信用取引です。
つまり、取引先を信用することが取引の大前提なのです。掛け仕入は、典型的な信用取引といえます。

[取引例1]

商品を仕入れ、代金20万円は掛けとした。

 借方貸方
 仕入 200,000買掛金 200,000

「掛け」とは、仕入れた商品の代金あと払いの意味です。これは、「買掛金」となります。
買掛金は、負債です。負債の増加は「貸方」となります。

[取引例2]

買掛金20万円を現金で支払った。

 借方貸方
 買掛金 200,000現 金 200,000

のちに買掛金を支払ったケースです。
これによって、「買掛金」は減少します。負債の減少は、「借方」となります

□支払手形の仕訳

支払手形とは、その名のとおり「手形で支払った」ときに使用します。
手形とは、「誰が、誰に、いつ、いくら支払うのか」が、くわしく書かれた証券です。

手形には、約束手形と為替手形の2つがあります。
実務においては、ほとんどが約束手形です。

約束手形とは、手形を出した人が支払うものです。
支払手形は、支払い期日に決済(現金化のこと)され、当座預金から引き落とされます。

[取引例1]

買掛金を約束手形で20万円支払った。

 借方貸方
 買掛金 200,000支払手形 200,000

約束手形による支払いは「支払手形」となります。「貸方」に「支払手形」となります。


[取引例2]

支払手形20万円が支払期日となり、当座預金から引き落とされた。

 借方貸方
 支払手形 200,000当座預金 200,000

「支払手形」は、支払期日となれば、当座預金から引き落とされます。
このことによって、支払手形は減少します。「支払手形」の減少は、「借方」となります。

「純資産」グループの仕訳

□純資産の増加は「貸方」、減少は「借方」に記入する

「純資産」グループの基本的な仕訳をみていきましょう。

おもな純資産グループの勘定科目を復習すれば、つぎのとおりです。

□資本金 など

純資産の仕訳の基本ルールはつぎのとおりです。
借方に「減少」、貸方に「増加」となります。

 借方貸方
 減少 増加 

□資本金の仕訳

会社をはじめるのは、お金が必要です。
まったくお金がなければ、会社をはじめることはできません。
会社をはじめるにあたって、会社へ出すお金のことを「元入れ」といいます。

元入れは、資本金であらわされます。

[取引例1]

店主が現金100万円を元入れして開業した。

 借方貸方
 現金1,000,0000資本金1,000,000

店の開業のための出資は「資本金」となります。純資産の増加は「貸方」となります。

まとめ

  • 資産の仕訳は、増加は「借方」、減少は「貸方」へ記入する
  • 負債の仕訳は、増加は「貸方」、減少は「借方」へ記入する
  • 純資産の仕訳は、増加は「貸方」、減少は「借方」に記入する

つぎは、第八講義になります。
こちらで、紹介しています。
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□第八講義 収益、費用の仕訳