直接原価計算とは何か
直接原価計算とは何か
直接原価計算を理解するためには、まず、変動費と固定費を知る必要があります。
変動費とは、製品の生産・販売量に比例して発生する原価になります。
固定費とは、製品の生産・販売量に関係なく一定額が発生する原価になります。
例えば、Tシャツ工場では、素材(直接材料)となる生地は、Tシャツを作れば作るほど消費されます。
したがって、直接材料費は、製品の生産販売量に比例して発生する原価=変動費となります。
これに対して、Tシャツ工場の減価償却費は、Tシャツをいくら作ろうとも一年間で一定額が発生します。
したがって、Tシャツ工場の減価償却費は、製品の生産・販売量に関係なく、一定額が発生する原価=固定費ということになります。
全部原価計算と直接原価計算
製品の製造にかかった原価をすべて製品原価として計算する原価計算を「全部原価計算」といいます。
これに対して、製品の製造にかかった原価のうち変動費のみを製品原価として計算する原価計算を直接原価計算という。
直接原価計算とは、利益計画に役立つ原価計算です。
CVP分析とは何か
CVP分析は、原価(COST)、販売量(VOLUME),利益(PROFIT)の関係を使った分析です。
このCVP分析により、損益分岐点の売上高、目標営業利益を達成するための売上高などがわかります。
変動費率と貢献利益率とは何か
売上高に対する変動費の割合を変動費率、売上高に対する貢献利益の割合を貢献利益率といいます。
[例1]
変動費(直接材料費) 製品1個あたり 1,000円
固定費(減価償却費) 年間 300,000円
製品1個あたりの販売単価 販売単価 @ 2,000円
仮に製品の生産、販売量が500個であった場合を計算します。
全部原価計算における製造原価は、800,000円(@1,000円×500円+300,000円)と計算されます。
したがって、製品1個当たりの製造原価は、@1,600となります。
(800,000円÷500個=1,600円)
この[例1]で、全部原価計算と直接原価計算を比較検証してみましょう。
[全部原価計算編]
このデータからもわかるように、製品を1個も生産、販売しなかったときは、利益は赤字にも黒字にもなりません。
販売単価 @ 2,000円 原価 @ 1,600円
販売数量 | 売上高 | 原価 | 利益 |
0 | 0 | 0 | 0 |
10 | 20,000 | 16,000 | 4,000 |
100 | 200,000 | 160,000 | 40,000 |
しかし、固定費である減価償却費は、毎年かならず、300,000円発生します。
このため、売上高が0だったとしても、本来、原価は、300,000円発生することになります。
この点が、全部原価計算での盲点になります。
[直接原価計算]
直接原価計算においては、変動費と固定費を分割し、利益を管理するため、利益管理が可能になります。
販売数量 | 売上高 | 変動費 | 固定費 | 利益 |
0 | 0 | 0 | 300,000 | △300,000 |
この表からわかるように直接原価計算では、変動製造原価のみが、製品原価として計算されます。
固定製造原価は、発生額を全額、その期間の費用とするので、製品を1個も生産・販売しかったときは、
赤字△300,000円と計算されます。
直接原価計算の予算管理方法
420,000円の利益をあげたいときの予算管理は、以下のような計算式が成り立ちます。
製品数量をXとしたとき、
1,600X-1,000X-300,000=420,000
計算式を展開します。
600X=420,000+300,000
600X=720,000
X=1,200
すなわち、420,000円の利益を確保するためには、製品を1,200個売る必要があることがわかります。
検算します。
売上高 1,200個×@1,600=1,920,000円
変動製造原価 1,200個×@1,000=1,200,000円
固定費 300,000円
利益 420,000円