第七章⑤ 費用と収益の前払い/前受けと未払い・未収

費用と収益の前払い/前受けと未払い・未収

費用の前払い


当期に来期分の費用も含めて支払うケースがあります。
火災や地震に対する保険料の支払いは、代表的な例です。
【取引】 8月に保険料1年分 12,000円を現金で支払った。

このときの仕訳は、つぎのとおりです。 

    借 方貸 方 
 保険料 12,000現 金 12,000 

3月決算の場合、支払った保険料12,000円は、当期分と来期分を含めて支払ったことになります。

 期   間金 額
 当期分の保険料 (8月から3月までの8カ月) 8,000円
 来期分の保険料 (4月から7月までの4カ月) 4,000円

このため、来期分である4,000円は、決算整理で取り消し仕訳する必要があります。
費用グループの仕訳ルールは、つぎのとおりでした。

  借 方貸 方 
 発生取消 

このため、保険料に関する決算整理仕訳は、つぎのようになります。

 借 方貸 方 
 前払保険料 4,000保険料 4,000 

決算整理において、来期分の保険料である4,000円を貸方に記入することで、取り消すわけです。

この当期に支払った費用を来期分へと整理する決算整理を「費用の前払い」といいます。
なお、前払保険料は、資産グループになります。 

収益の前受け

当期に来期分の収益も受け取るケースがあります。
他社に土地を貸している場合などの受取地代は、代表的な例です。

【取引】 2月に受取地代3カ月分(2月・3月・4月)300,000円を現金で受け取った。

 このときの仕訳は、つぎのとおりです。 

    借 方貸 方 
 現 金 300,000受取地代 300,000 

3月決算の場合、受け取った300,000円は、当期分と来期分を含めて受け取ったことになります。

 期   間金 額
 当期分の保険料 (2月と3月の2カ月分) 200,000円
 来期分の保険料 (4月の1カ月分) 100,000円

このため、来期分である100,000円は、当期分から取り消しする必要があります。

収益グループの仕訳ルールは、つぎのとおりでした。

 借 方貸 方 
 取消発生 

このため、受取地代に関する決算整理仕訳は、つぎのようになります。

 借 方貸 方 
 受取地代 100,000前受地代 100,000 

決算整理において、来期分の受取地代である100,000円を借方に記入することで、取り消すわけです。

この当期に受け取った収益を来期分へと整理する決算整理を「収益の前受け」といいます。
なお、前受地代は、負債グループになります。 

費用の未払い 収益の未収

まだ、支払っていないが、当期に計上すべき費用があります。
銀行からの借入にともなう支払利息は、その代表的なケースです。

 【取引】  2月に銀行から1,000万円を借り入れた。 借入期間は、6カ月。

借入金にともなう支払利息60,000円は、借入金の返済月の7月にまとめて支払う。
このときの仕訳は、つぎのとおりです。

 借 方貸 方 
 現金 1,000,000借入金 1,000,000

注意点は、まだ、支払利息を支払っていないことです。つまり、仕訳をしていません。
この仕訳は、決算整理でおこないます。

3月決算の場合、支払利息60,000円は、つぎのように分けることができます。

 期  間 金 額 
 当期の支払利息(2月から3月までの2カ月) 20,000円
 来期の支払利息(4月から7月までの4カ月) 40,000円

決算整理で、仕訳していない当期分の支払利息20,000円を計上する必要があります。
支払利息に関する決算整理仕訳は、つぎのようになります。

 借 方貸 方 
 支払利息 20,000未払利息 20,000

まだ、支払っていない当期に計上すべき費用を「費用の未払い」といいます。
なお、未払利息は負債グループになります。 

収益の未収

収益にも見越しがあります。 たとえば、受取利息です。

7月に受け取るべき6か月分[2月~7月まで]9,000円の受取利息をまだ受け取っていないケースを考えてみましょう。

3月決算の場合、受取利息9,000円は、つぎのように分けることができます。  

 期  間 金 額 
 当期の受取利息(2月から3月までの2カ月) 3,000円
 来期の受取利息(4月から7月までの4カ月) 6,000円

※ 9,000÷6カ月=1,500(1カ月の利息)

  当期分 1,500×2カ月=3,000 (1月から3月まで)

  来期分 1,500×4カ月=6,000(4月から6月まで) 

決算整理仕訳はつぎのとおり。

 借方貸方 
 未収利息 3,000受取利息 3,000 

このまだ受け取っていない当期に収益計上すべきものを「収益の未収」といいます。
なお未収利息は「資産グループ」になります。